第3章 お料理をする水曜日
買い物カゴを肘にかけ 美結は本日の夕食を考える。
いつものように出来合い弁当でもいいが、たまには自炊をしてみてもいいかもしれない。そんな時、耳に先程の元気な声が聞こえてくる。
「お買い得お買い得!今日の特売キャベツ一個98円!安いよ安いよ!!」
その声を聞き、ふと足を止める。
キャベツと聞いて美結が1番に思い浮かべる料理はひとつしかない。
「……今日はお好み焼きにしようかな」
「オコノミヤキ?」
「うん キャベツ安いし。どうかな?」
「オレはわからないしミユに任せる」
平日は仕事の疲労や面倒くささもありあまり料理をしないが、一人暮らしも長いので出来ないと言うわけではない。広島風のお好み焼きは美結自身も大好物であるし、友人が来る時には振舞うことや催促される場合もあるくらい 美結の得意料理の1つと言える。今夜はちょうど客人もいるし、閃けば無性に食べたくなってくる。
「よ~し!今日はお好み焼きにしよう」
そうと決まればスーパー内を右往左往し 家に足りない食材を次々カゴに入れてゆく。故郷の味は時々恋しくなるもので、家には生鮮食品以外の材料は基本的には揃っていた。
「う~ん 豚バラ肉150gと300gどっちにする?」
「使い易いように分けられて売られてるんだ。なるほどね」
「うん。男の人いるし一応多い方にしておこうかな……あ、鰹節あったかな?まあいっか買っておいても日持ちするし。 ねっ 来て?鰹節は多分こっち」
イルミの袖を引き乾物コーナーへ移動する。夕刻の賑わうレジを過ぎ、そのまま帰路についた。