第3章 お料理をする水曜日
一応は長女であるし自称 面倒見は悪くない方だ。
美結はバッグからブランド物の長財布を取り出した。千円札を3枚抜きイルミの前に差し出した。
「はいこれ」
「なに?」
「この国のお金。3千円あれば出かけた時に何かあってもなんとかなると思うから。もし迷ったらタクシー使ってもいいしお昼も好きな物買って食べていいよ。あ、でも無駄遣いは絶っ対ダメだからね?私だって余裕あるわけじゃないんだから」
大きな目をきょとんとさせながら イルミは目の前の紙幣を見つめている。受け取る気配がない様子を見て、美結は大きく首を捻った。
「どうしたの?」
「いや」
「足りないとか言わないよね?」
「いや 金を恵まれるのなんて初めてだなって」
「イルミってその辺のプライドが高いタイプ?その心がけはすごく素敵だと思うけどこういう状況なんだし仕方ないよ。ありがたく受取なっ」
勝手にイルミの片手を取り 3千円を握らせる。イルミはそれを不思議そうに見下ろしていた。
「じゃあ私行くからね。お留守番よろしく!」
美結は慌ただしく部屋を出る。溜まっている未読メッセージに返信をしつつ、会社へ向かった。