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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第1章 あなたと出会った月曜日


今日は月曜日。

いつものように一時間程度の残業の後 サラリーマンの体臭が充満する満員電車を降り 駅前のスーパーに立ち寄った。ここで値引札のつけられた弁当と気休めの野菜ジュースを購入するのがここ最近の美結だ。

暗さの増してくる帰宅途中、片手にはいつもスマートフォンがある。連絡ツールのLINEは基本ランダムに鳴りっぱなしだ、仕事中に未読にて溜まっていたものをざっくり確認し 必要に応じて返信を繰り返した。
そんな中「未読27件」と表示されているのは大学時代の女友達で構成されたグループのものだった。こういう時は何かしらのトピックが絡んでいるのは明白、流し読みをすればすぐに要件は見えてくる。この友人グループ内で最も人脈が広く 最も仲の良い出版社勤務の伊織が、大手航空会社の若手パイロットとの合コンを取り付けたと言う。憂いも喜びもなく 美結はすぐに参加の旨を送り返した。

友人達はいい意味でライバルでもあり同志でもあった。各々がそれぞれのキャラクターをわきまえているので大体はうまくニーズが分散されるし、それぞれの男性タイプも周知であるから狙い先も分け合う事が出来る。中でも妹キャラを担っている美結は外見性格共に断トツの可愛い系、毎回トップ争いに並ぶ人気を博する。不参加をする理由はどこにもないのだ。

仮に外れ合コンだったとしても「反省会」と称し、男性陣をこっ酷く評価したり 各々が持つ“既存案件”の進捗報告をしたりする 世の男性が聞いたらドン引きであろう本音の女子会は面白いのである。

「鍵は……あった」

ブランド物のバッグの中からキーケースを取り出し アパートのドアを開ける。気温も落ち着いてくる季節、仕事終わりであれば尚更心地いいものだ。

繰り返しているとわかってくるが満足いく合コンのヒット率は決して高いものではない。簡単に中身も容姿も肩書きも合格点な男には出逢えないのだが わかってはいても毎回微々たる期待をしてしまうのが人間である。
パイロットのと合コンは初めてであるし 将来有望なイメージはある。いつも以上に期待が高まり、LINE返信を繰り返しながら美結は口元を曲げ ピンヒールのパンプスを脱ごうとした。
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