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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第10章 あなたと私の火曜日


「で、その空白の一週間何してたの?」

「念かけられて強制的に異世界に飛ばされてた」

「異世界?どんな世界?」

「この世界と大きく違うのは念能力者がいないって所かな、なんていうか平和な世界。それ以外は文明発達も言語もそんなに変わらない。飛んだ先の狭い部屋に女が1人住んでてさ、ミユって言うんだけど。そこに身を置いてた」

念能力とは奥が深い。兄にかけられたものがどんな能力かはわからないが 何が起こったとしてもそこまで驚きはしない。

それよりも違う点が気になった。この兄が異世界の女とひとつ屋根の下、想像するだけで合成写真にしか思えなかった。


「…ちなみに女ってどんな女?」

「そうだな、なんか呑気でアンバランスな女。
オレと同い年って割には外見や中身は幼いし。そのくせ色恋事になると主導権取りたがって オレ相手に恋愛ごっこしてきたりさ。事あるごとにさりげなく触れてくるし、甘えた事をするし言うし。典型的な女を武器にしてるタイプなんだけど そのくせ本音で話す時はじいちゃんみたいな年寄りっぽい語尾で訛った面白い話し方するんだよね。あとあまりにも弱くて驚いたな、雨に濡れたくらいで高熱って出るもの?異世界の女ってそうなのかな?」

「…知らないけど…」

いつになくペラペラ喋る、兄にそんな感想を持つ。

ミルキは今の話を脳内で勝手に要約する。

喋るというよりはこの場合 “語る”と表現する方が適切なのかも知れない。


「ギャルゲーみたいだな」

「ギャルゲー?」

「画面の中から 可愛くてエロい女が色んなモーションかけてきて、超ベタな展開を踏んで恋愛するシミュレーションゲーム」

「つまりは仮想世界での疑似恋愛か。まさにそれかも」


ミルキは怪訝な顔をする。
それを認めるということはその世界での恋愛に興じていたと肯定するも同然。兄の趣味趣向に興味はないがそんな光景は全く似合わないのは確かである。

何より今回の相手は画面の中ではなく 異世界とはいえ生身の女、肯定するならばどこまで本気かが気になってくる。
ぎこちなく質問をする。

「まさかと思うけどその女の事 ……、本気で好きになった…とか?」

イルミは片手を顎に添え、少しの間を置いた後 答えを返した。

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