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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第2章 期待と不安の火曜日


「何も食べてないしお腹空いてるでしょ?私のご飯半分あげるね」

「いいよ。オレは何もしてないし」

「いいからいいから 私プチダイエットしたいし」

「なんで?全然太ってないのに」

「え~そんな事ないよー 顔痩せしたいし」

謙遜を返しながら 昨日のLINEを思い出した。
今週金曜日は伊織主催の例の合コンが控えている。フェイスラインくらいは多少整えばと悪足掻きのようなものだった。童顔の美結は自他ともに認める丸顔、本人はそれを少し気にしていた。

イルミの弁当に勝手にご飯を移し 可愛らしい笑顔を添えながらどうぞと言う。そして自身の弁当の野菜類から口に運び出した。視界の横から弁当の脇役が入り込んでくる。

「ミユ これなに?」

「柴漬け」

「これは?」

「磯辺揚げ。中身は竹輪」

「ふーん」

「……おいしい?」

「うん。まあまあ」

てんこ盛りご飯が半分になる頃には 箸をあまり違和感なく使えているから驚きである。大の大人が箸で摘まんだ物をいちいち聞いてくる様は、子供みたいにちぐはぐで微笑ましい。
そういえば故郷にいる6つ離れた弟にも こういう可愛らしい時代があったものだと、ふと思い出していた。


食事が終わる。
美結は寝室からノートPCを持ち出して来た。仕事以外では極力触りたくないのが本心であるが、今日は残業なしで帰ってきた分 少し作業が残っていた。仕事の持ち帰りは原則禁止だが、アフターシックスに予定がある場合はこうしてこっそり持ち帰ってくるのが常だった。
通勤バッグからUSBを取り出しイルミに先の入浴を勧める。イルミが洗面所に消えたのを見届けてから、リビングのテーブルで作業をはじめた。


「はぁ…お終い!」

目処がたった所で大きく伸びをする。
ネットはスマホで事足りるこの時代であるし インターネットを部屋に引いていない。だがせっかくPCを出したのでスマホのデザリングを使い、メール確認やネットサーフィンをはじめる。カチカチとマウスのクリック音が捗る。

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