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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第10章 あなたと私の火曜日


【東京都 港区】

火曜日。

時はすでに18時を過ぎていた。

「とりあえずナマ中二つ!あと枝豆と串盛りで」

定時に無理くり仕事を終わらせそのまま会社を出た。美結はすでに会社近くの大衆酒場の中で声を張っていた。

「へぇ~河合さんてビール呑むんだ。可愛いカクテルとかシャンパン呑むイメージだった」

「呑みますよビール大好きですっ!呑まなきゃやってられません!」

「だよねぇー 今日は呑も呑も!」

向かいの席には隣の部署の先輩女性社員が座っている。

昨日はどうしても最後にイルミに会いたくて無理矢理に会社を早退したので さすがに今日までは休めなかった。仕方なしに自分に鞭をうち出社をした。メイクも服装もブローも 今日は適当もいい所だった。

午前中は昨晩同様 抜け殻状態のまま業務を進めた。そして本日もたまたま昼食後に 手洗い場でくだんの先輩に出くわしたわけだ。

互いに傷を舐め合う目的というわけではなかったが 思い切って「好きな人がいたのに私も振られてしまった」と話しを持ち掛けてみた。

日頃であれば 職場の同僚以上の関係はないのだが、今回は違う。状況が似た歳も近い女性が2人集まれば その手の話や愚痴は幾らでも出て来る。当然職場でコソコソ話すだけでは会話は終わらず、半ばノリで業務終了後にさし呑みをする事になったのだった。

「河合さんて出身どこなんだっけ?」

「広島ですよー」

「そうなんだ!生まれも育ちも港区女子かと思ってた」

「あ、じゃあそういうことにしておいてくださいっ」


思えば先輩とは仕事の件と世間話以外、殆ど話したこともない。

恋愛話と合わせ 互いの生活や環境について話すのも気分転換にはなるし、それなりに楽しい時間を過ごす事が出来た。



すでに何時間か呑んだだろうか。

美結も人の事は言えないが 向かいに座る先輩もまた酒には強いようで、焼酎のボトルは既に二本目の蓋が開けられていた。
少しだけトロンとした気分でいると 先輩の羨むような声が聞こえてくる。
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