第9章 あなたが帰る月曜日
イルミは視線を上げる、リビングの壁掛け時計に目を向けた。
「そろそろ時間。離れて」
「嫌っ…」
「ミユ」
「はなれないっ」
「離れろってば」
「……痛っっ…」
突如腕を掴まれる、すごい力だったと思う。
痛みに顔が大きく歪むが ここで離れたら終わりだと本能が告げる。 負けじとそれに耐えていればイルミの手にも益々力が入る。
「離れて」
「やだっ…離れない…っ」
「もしも下手に巻き込まれて別の世界にでも飛ばされたら オレの力じゃどうにも出来ないし探しようもない」
「イルミだって来れたんだから私だって行けるかもしれないもん…っ!!ちゃんとまた帰って来れるかもしれないし!」
「そんなに簡単じゃないんだよ」
「わからないよそんなの…!」
「……っ、………………」
首の後ろでトンと微かな音がした。
それと同時に首元に鈍い痛みが広がる、視界がグラリと気持ち悪く揺れた。立っていられず 膝がガクリと沈み込んでしまう。
「いる……み……っ………?」
何をされたのかはわからないが、眉一つ動かさないでいる目の前のイルミの仕業である事はわかった。薄れゆく意識の中で 力の入らぬ手でもってイルミの腕を必死に握り締めた。ただそれも虚しく 身体は前に崩れ落ちてしまう。
それをイルミの手により支えられた所まではかろうじて覚えていた。
それから目覚めるまでの数時間。
気を失っていた間の事は 当然ながら何もわからなかった。