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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第2章 期待と不安の火曜日


17時半、美結の本日の業務が終了する。

「お疲れ様でした。お先に失礼します」

笑顔で帰社の挨拶を述べた。
異次元から来たという謎の男が気になり、今日は残業なしで帰路につく。

会社からの最短ルートを通り人のごった返す改札を過ぎ満員電車に乗る。通勤片道は30分程、18時過ぎにはいつものスーパーに立ち寄る事が出来た。

美結は真っ先に惣菜コーナーへ向かい 値引き札のついた最近お気に入りの幕の内風健康弁当をカゴに入れた。普段なら野菜ジュースと共にレジへ直行する所だが、今日は惣菜コーナーで足が止まったままだった。

「……………………」

美結とて良心はある。イルミの分も買ってやるべきかと心の中から声がした。言っていることがどこまで本当かわからない以上、もし虚言であった場合にカロリー不足で衰弱され救急車沙汰になったりしても困る。身元引受け人はどう考えても美結になってしまうではないか。
赤い値引き札のついた弁当のみをぐるりと見渡した。自分の弁当よりも100円安い 乱雑に揚げ物が乗った弁当をカゴに入れる。


アパートに近付く頃にはあたりは既に暗くなってくる。自室に照明がつけられているのが見えた。
祖父母含め近所の人も親同然という暖かい田舎で育てられた美結は 基本的に賑やかな雰囲気が好きだった。
今でこそ一人暮らしに慣れたとは言え 家に話し相手がいると思えば多少嬉しい気がしないでもない。何より今の所、特に大きな害はない。美結は静かに自室のドアを開けた。

「……ただいま」

小声で言いながら部屋に入る。
退屈そうにテレビを観ていたイルミが 瞳だけを素早くこちらに動かした。
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