第2章 期待と不安の火曜日
昨晩から何も食べていないイルミを見ると 昨日と同じように「気にしなくていい」と言いながら、フローリングに転がった女性向けファッション誌を物珍しそうにパラパラめくり出した。
そうは言われても気になる所だが美結もゆっくりしてはいられない。数分で食事を終え、キッチンの棚の下からカップラーメンをひとつ取り出し それをガラステーブルに置きイルミに声をかけた。
「これ食べなよ お湯はケトルで沸かしてね」
「仕事中は食事なんか出来ない事が殆どだし。一週間くらいなら何とでもなるから」
「………どういう仕事と身体してるの」
イルミは雑誌から顔を起こし臆する様子もなく質問に答えてくれる。
「仕事というか稼業なんだけど殺し屋をしてる。そういう環境下で訓練してきてるから」
「……。あ、そっかー 殺して欲しい人殺してくれるんだもんねー」
「信じてない?本当なんだけどな」
始終表情を変えないイルミに色々ツッコミたくなってくるし、留守中の諸注意もごまんと言いたい気がする。しかし出社の時間が迫っている。
不安を残しながらも美結は玄関のドアに鍵をかけ 会社に向かった。