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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第9章 あなたが帰る月曜日


週の始まり月曜日。

昨日は朝から強行での帰省をし、その後も休息する事なく日付けが変わるまで起きていた記憶がある。美結の瞼は重い。
気持ちの面では 充実したような物悲しいような複雑さはあるが、疲労の残る身体は正直で 朝の目覚めは決してスッキリしたものではなかった。

「起きたね」

「うん。……おはよ」

イルミの声に挨拶を返した。一体いつから起きていたのか イルミは頬杖をつきながら美結をじっと見下ろしていた。

「……何してたの?」

「考え事してた」

「何を?」

「まぁ色々とね」

「……そっか」

美結は欠伸と共に眠い目をこする。
今日はいよいよ イルミが元の世界に戻る日だ。
熱い夜を過ごした後であるし 少しはこの世界を去ることを名残惜しく考えてくれているのだろうか、勝手にそう解釈する。イルミは軽やかにベッドから身体を起こした。

「帰ろうか」

「え」

「ミユはこれから仕事なんだよね」

「…まあ…」

イルミの口から出る現実的な言葉を受け、一瞬考えこんでしまった。
日頃から 社会人の義務であるから言われるままに仕事をこなしているだけだ。責任感ややりがいは殆どないし、今日1日くらいは休暇を取りギリギリまでイルミと時間を過ごしたいとも思えてくる。そんな甘ったれた理由を添えればイルミに叱咤されそうなので ぽつりとだけ口にしてみる。

「休んじゃおっかな……」

「え?大丈夫なの?」

「…だって、…」

ベッドを抜けイルミの背中に駆け寄ると 後ろから両腕を回す、腰元に抱き付いた。昨日抱かれたその身体の温もりに触れると あと数時間で別れが訪れるのが信じられなくなる。

「イルミ……」

「なに?」

意味なく名前を呼んでみる。
イルミが帰る時の様子が、帰り方が、具体的にどうであるかわからないが 目の前からその姿が消えるとしたら。
それをリアルに想像してみると 悲しさしか残らないではないか。


「……イルミ……っ、」

「どうしたの?」

抱きつく腕に力が入ってしまう。
例えば1人きりでいつもの部屋に取り残されたとしたら。その後 泣き崩れてしまう自分がいるとしたらどうしようもなく孤独を感じてしまう。
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