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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第2章 期待と不安の火曜日


美結の指示通りにスエットを着込んだイルミは、上着の裾をちょんとつまみ 勝手に話題を変えてしまう。

「いいね この服」

「あ、そう……それは良かったね」

「着やすいし。オレの国にも似たようなのあるけど柔らかくてこっちの方がいいな、これなんて素材?」

「素材…?さぁ…ポリエステルとかじゃないの?」

イルミの性格のせいなのか、異次元の人間だからなのか、会話にはなるがどこか論点がどこかずれている気がする。

そして、状況はますます悪くなったと言うか 何と言うか。美結は哀れみを込めた目をイルミに向けた。鍛えられた裸体はそこそこ色気もあったが着替えた途端 一気にオタク臭が出たと思う。

スエットはフリーサイズとはいえ規格よりも大きい男には小さかったみたいだ。手首足首が丸見え状態のつんつるてんで 不摂生な雰囲気と長髪、更には美少女プリントがそこに激しく拍車をかける。

男がこぞって遊びに来たいと両手を合わせる美結の部屋に 何故こんな男を一週間も匿わなければならないのか。頭の中が急に冷静になり、満面の笑みで嫌味を吐いてみた。

「よく似合ってるよ。気に入ってくれたなら良かった!」

「そう?どうも」

何がどうもだ、褒めてない。イルミとの会話の距離感は少しも掴めないままだ。


美結はキッチンに向かい冷蔵庫を引く。
今朝はたまたま早めに起きたが 普段はそんなに時間もない、朝食はヨーグルトやシリアルなど簡単に食べられる物が多い。冷蔵庫を見渡し買い置きのヨーグルトと切ったままにしてあったリンゴを取り出し リビングのガラステーブルに出した。

「私 食べたら仕事行くからね」

「わかった」
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