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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第8章 最後の夜


身体は正直でイルミの指を欲しがって仕方なかった。秘部がより俊敏な刺激を求め イルミの手を勝手にきゅんと締め上げる、それを奥まで飲み込もうとする。
美結はぎゅうと目を瞑る。片手を無理やりイルミの顎に伸ばし、重なる顔を思い切り押し返した。

「…………」

「…………っ」

「……なに?」

「イルミの嘘つき」

呼吸を荒げながらもはっきり告げた。美結の言葉は意外だったようで イルミはきょとりとしながら美結を見下ろしていた。

秘部に入ったままのイルミの手に自身の指先を添えて一旦動きを制止する。怒ったところで顔に凄みがない事は美結自身が1番よく知っている。ましてや痴情の最中のこの状況だ、それでも構わず 潤んだ瞳を精一杯すごめてイルミを下から睨んだ。

「オレがいつミユに嘘ついたの?」

「人のこと軽い女みたいに言うけど…自分はどうなの?」

「え?」

「女のコには興味ありませんみたいな事言っておきながら こんなにうまくて…実は相当遊んでるの?!」

美結にすれば当然の疑問だった。
イルミが進めることの運びも 触れ方も、どうしても不慣れには思えない。むしろ女の身体をかなりよく知っていると言った方が正しいだろう。
このタイミングでそんな事を問いたざすのはムードぶち壊しであるのは百も承知だが、気になるものは気になって仕方がない。
イルミはようやく、美結の中から指を引き抜いてくれる。

「本当だよ。まぁ初めてではないけどミユに比べたらこういう経験は比較にならないくらい少ないと思うけど」

「嘘」

「嘘じゃないよ」

「信じない」

むっと頬を膨らませる。
芽生えた嫉妬をシナリオに入れて、更に熱く盛り上がる展開だってあった筈なのに。これではジェラシーを剥き出しにする10代の若者同然だ。

イルミは首を傾げてしまう。悪びれる様子は微塵も見せはしなかった。

「しいて言うならそうだな。人間の動きや仕草ってものに対する感覚が普通のヤツより鋭いだけ」

「…………」

「多分ミユが思うよりもずっと」

「…………」

「だからミユがどこをどうして欲しいかは、手に取るようにわかる」

「…………」

「納得した?」
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