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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第8章 最後の夜


片手が難なく背中のホックを外しにかかる。上にずらされた下着を分けて両胸を掴まれた。感触を楽しむよう それを手の内でゆるゆる遊ばれた。

「柔らかいね。胸」

「…………」

「怖いの?」

きっと、恐怖を匂わせた表情をしていた。
経験上 ベッドの上でSっ気を出したがる男は少なくない。だがイルミのそれはそうじゃない、もっと本質的な部分で、本能が逆らうなとそうさせる。言わばそんな次元の話のように思えた。

イルミが胸元へ顔を寄せる。ぷっくり隆起する先端を舌先が掠めた。

「んっ…」

身体は正直だ。物足りない刺激を欲するよう胸に意識が集中する。ちらちらと繰り返される淡い愛撫は 雰囲気に似合わず丁寧で、もっともっととねだりたくなってしまう。

時折ぴくんと揺れる身を押さえるよう、イルミの片手がしっとり頰を滑る。指先が耳元や首筋を辿ると 胸への刺激とリンクするようで、身体の芯がジンジン痺れてくる。

「はっ…あ」

執拗に続く感覚にいよいよ目眩を覚える。イルミの指先は思いのほか器用で、胸の中心部をとろとろ溶かされるような感覚だった。

「も…、だめっ…」

そこに集中すればする程 下半身がキンと熱くなる。ふっくら湿った秘部に触れて欲しくて腰を微かによじってしまう。


イルミは美結から顔を上げる。そして静かに身体を起こし 美結の腕を引いた。

「ミユ 見て」

「……ん」

「前」

荒い呼吸の元、そっと目を閉じていると耳元にそんな声が響く。それに従い薄く瞳を開けた。

「…や…やだ……っ」

「この世界のこういう場所には鏡が置いてあるものなの?」

思い切り顔を背ければ 顎を掴まれまたも前に向けられる。
そういえばこの部屋には大きな姿鏡があったが ラブホテルにはよくある事、たいして気にもしていなかった。イルミは後ろから美結の耳元に顔を寄せ、じっと鏡の中の美結を見張っていた。

イルミ自身は相変わらず、凛とする雰囲気を微塵も崩していないのに 美結の乱れ方には我ながら性的興奮を煽るいやらしさしかなかった。

赤く火照る頰も、濡れて潤んだ瞳も。中途半端に剥がれた服も、取られた下着の合間から覗く白い胸元も。自分の姿になんて欲情したくないのに これでは自然と視線がそちらへ向かってしまう。
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