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〈H×H 長編〉擬似的な恋愛感情

第8章 最後の夜


「…イル、ミ…?」

「…………」

「……っ、」

荒々しく服を捲り上げておきながら何も言わず 触れる事もせず、ただ固く目を向けられた。イルミは元々 鋭いとも精悍とも違う妙な目力を持ってはいるが 今はその視線が刺さる程に痛く羞恥を煽る。

薄暗い部屋の中で、柔らかな曲線を描く胸元が必要以上に上下してしまう。肌に溶ける白い下着は 繊細なレース部分が誘うように地肌を淡く透けさせる。
顔色を伺うべくイルミを見上げても視線が噛み合う事はない。
美結は瞳を泳がせ 逃げるように顔を背けた。

「……あんまり見ないで」

「どうして?どうせオレに見せたくて着てるんでしょ、これ」

「え……」

「前に風呂場に干してた事もあったね。あれは他のヤツに見せたの?」

「…っ…」

胸元に手を伸ばされ 人差し指で胸間を支える細い部分を掬われた。ほんのり肌に触れる指先は少しだけ冷たくてゾクリとする感覚を覚えた。

イルミの言う事は最も。あの日はそういう事情を考慮したし、本日も当然こういう事を意識はしている。表情に戸惑いを浮かべながら イルミの顔を見上げた。

「…イルミ どうしたの…?」

「なにが?」

「なんか…怒ってる?」

何の事は無い、これは単純なヤキモチ。わかっていてそれを聞いた。

キスをするのもそれ以上に触れ合うのも 今日が初めてではない。
今までとは明らかに違う事の運びは剥き出しの嫉妬心から来るものだろう。男は単純であるし女以上にその辺りは潔癖な生き物である。

「別にオレは怒ってるワケじゃない。たださ」

「……っ、」

指をかけられたままの下着を急に上に引かれる、美結の背がゆるく弧を描く。

「ミユが本当にオレのものだとしたらさ。オレの知らない所で他のヤツとこんな事するのはなんかムカつくと思っただけ」

「…やぁっ…」
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