第7章 思い出の日曜日
「ううん、例え話楽しいよ。入れないならそうだな…お客様としてお家に招くとか そういうやり方でもダメ?」
「なるほど。依頼人としてならいけるかな 」
「依頼人?」
「うん。あ、でもやっぱりダメだ ミユ金なさそうだし」
「…確かにお金持ちではないけど そこまでお金遣い荒いつもりもないけどなぁ」
話しているとすぐに乗り換えの駅に着いた。
◆
時間帯のせいもあってなのか 行きに比べれば帰りの新幹線は人も多く、家族連れや若者の団体もおり車内は賑やかだった。
イルミは行きと同じく睡眠に徹するかと思ったが、そんな事もなくそれなりに会話に付き合ってくれた。
昼食も遅かったので 夕食時になってもそんなに空腹を感じる事もなく、新幹線の車内販売で缶ビールと少しのおつまみを購入した。
お好み焼きは味がしっかりしているし喉が渇く、缶入りのビールがやたら喉越し良く感じられた。
長居はせずに実家を出て帰路に着いたものの やはり物理的に広島は遠く、都内に戻る頃にはすっかり夜になっていた。
他に予定がある訳でもないので そのまままっすぐ地元の駅まで電車を乗り継いだ。見慣れた駅は 日曜日の夜であるし平日のラッシュ時に比較すればとても静かで閑散として見える。
休日にしては早くに家を出た筈だが こうしてみると1日があっという間。
スマホで時間を見れば22時近かった。改札を出てからイルミに話しかけた。
「帰ってきたねー!遠かったし疲れたでしょ お疲れ様」
「オレは平気。ミユこそ、体力なさそうだし」
「ん〜 ちょっと疲れたけど大丈夫」
嘘ではなく足取りはそこそこ軽い。今日1日を振り返り、少し後ろを歩くイルミに会話を繋いだ。
「かなり強行スケジュールだったけど母さんもばあちゃんも喜んでたし無事行って来られてよかったなぁ!父さんが留守だったのもいいタイミングだったし」
独り言同然にそう言ったが 返答が無い。美結はくるりと後ろを振り返った。
改札口を見渡すように、少し顎先を上げ立ち尽くすイルミの姿が目に入る。美結はイルミに近寄った。
「……どうしたの?」
「この駅も見納めだなと思って」
「え」
「人が集まるこの辺りはよく見て回ったし」