第5章 柱辞めます
杏寿郎はお館様の言葉に頷いて言った。
「確かに驚きましたとも!まさかの彼らとは、という気持ちです!」
「だから、私は自由にさせたい。お願いだ、杏寿郎。彼らから……いや、あの少女から何も失わせたくない」
お館様は、奏の全てを知っている口振りだった。
「君達はまだ知らないだろう。彼女の過去は未来のあの世界だからこそ残酷だ。彼女の心は過去に囚われたままで、君達が来るまで毎日泣いていた」
三人はお館様の言葉に目を見開いた。
「君達は彼女の生きる希望になれている。それはすごいことだ。だから、未来のあの世界で生きてほしい」
お館様の言葉に他の柱は口を挟めず、苦虫を噛んだような顔をしている。
「お館様、お願いあります」
「何だい、義勇」
義勇はある日の就寝時のことを思い出した。
『私ね、貴方達の世界に行ってみたいの。怖いけど、鬼と戦ってみたい。オリジナルの呼吸でさ。柱の人とかかまぼこ隊と話してみたいなぁ』
「一度だけ、彼女をこの世界に連れて来てよろしいでしょうか」
義勇の言葉に皆が目を見開いた。お館様はそれに微笑んだ。
「いいよ。炭治郎達も呼んで、たくさん遊ぼうか」
「はい」
義勇は未来での返事をしてしまったが、お館様は微笑んでくれた。