第1章 夏休み
気付くと、無一郎と実弥がドアに隠れて見ていた。
「あれ?二人共、どうしたの?」
私の言葉に、二人は渋々と部屋に入ってきた。
「冨岡が真剣な相談してたから入りにくかったんだよ」
「実弥、違うでしょ。義勇って呼んであげて。義勇にも悩みあるし、私にも悩みはあるよ」
――お前なんか消えろ。
私は実弥の頭を撫でてやった。
「私も嫌われ者だったから、私は義勇に言ったの。笑顔で居ると世界は変わるって。だから、二人も自分に寄り添ってくれる人を大切にして生きてほしいの」
たった15年生きてきた私がこんな人生と言うのはおこがましいが、これが私が生きてきて気付いた見解である。
「私達は家族でしょ?みんな仲良くね」
私の言葉に三人はちゃんと返事してくれた。
私も嫌われていたから分かる。嫌われ者の悲しい生き様を。
いつも変な生き物を見ているかのような扱いで、私を見ている人間の顔はとても恐ろしいものだった。
だから、私は笑顔で居て、趣味というものを得たら、世界は思いっきり変わった。
だから、君達も幸せに生きてほしい。
「さすが、お姉ちゃんだね」
無一郎の言葉に私は笑った。
確かに私は本当のお姉ちゃんになれてきたかもしれない。