第1章 なんか目が笑ってないけど
一瞬、ポカーンと凍りつく会場、
その空気を先陣切ってくれたのは
「何それ何プレイ!」という
胸を当てられ喜んでいた男子。
「ああ、確かに、って
М気質あるよね」
「え、いや、」
「うんうん、わかるかも」
「え?ちゃんって変態なの?」
そ、そうなの?
気質なんてどこでわかったの?
私って変態なの?
みんなを笑わせたかっただけなのに
話は思わぬところで着地して。
SだのMだの、プレイだので
盛り上がるみんなをよそに
今まで何も発しなかった目の前の彼が
「大丈夫?」と顔を近づけた。
その動きでフワッと
彼の匂いがこちらにまで香る。
さっきの男子とは違う、
洗剤のようないい香りに
つい目を閉じてしまった。
鼻から吸った息を
すう、と吐き出して目を開けると
驚いた顔をする彼。
「…あ、ごめん、つい」
匂い嗅いでた、って変態か
私は変態だったのか!
しかも、つい…だなんて
癖で当たり前のように変態だったのか!
「…いや、顔色悪い、ほらこっち」
その気遣う優しさとは裏腹に
私の腕を強引に掴み席を立つ。
「え、あ、さ、くらいさん」
「ふふ、櫻井さんか、悪くないね」
不敵な笑みを浮かべた彼の
最初に見た時とは全く違う印象に
ドキっとして。
やっぱりこれは
私が変態だからなんだろうか。