第3章 気温が下がったのは気のせいかな
櫻井さんとの1日はあっという間で。
暗くなった空を見て
「送るよ」
その一言に寂しさを覚えた。
「…うん、ありがとう」
昼間はあんなに途切れなかった会話
近くの駐車場まで歩くそのたった数分、
私たちに会話は無くて。
でもそれは嫌な時間じゃなかった、
少なくとも私にとっては。
助手席の扉を開けて「お邪魔します」と
今までも2人きりだったのに
やっぱり完全な2人きりの空間になると
呼吸さえも恥ずかしい。
「なんか緊張してます?」
ふふ、と笑う慣れた手つきで
シートベルトをし、ハンドルを握る。
「いや、まあ、してない、してないです」
どっちだよ、とアクセルを踏んで
発進する車。
もう終わりか、
その思いがバレたのか
「まだ一緒にいようか?」