第3章 気温が下がったのは気のせいかな
明るい街中を歩きながら
私の少し前を歩く彼の背中。
「なんか変な感じ」
私がそう言うと振り向いた彼が
え?何?と。
「櫻井さんが隣を歩いて
今からランチだよ?
いつも会う時は夜、お酒、が付き物だし、」
「明るいし化粧してるし服可愛いし?」
「え?」
「あはは、うそうそ」
「ど、どれが嘘?」
「最後」
「そう、だよね」
「あなた、そう言うの言われたい人?」
「女の子なら皆そうだと思うけど」
「言ったら好きになってくれんの?」
「うんうん、絶対なる……て、え!?」
「やめた
この話は夜の楽しみにする」
私を横目で見て
口元に小さく弧を描いた彼が
ほら、ついた
と足を止めたのは
カフェテリアのあるお洒落なお店。
もちろん素敵なお店だけれど
それよりも何よりも彼の見せたその笑いと
"夜"の楽しみにする、
その言葉がどうしても耳から抜けなくて。