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素直になれなくて【IDOLiSH7】

第1章 さよならも言えずに






私はある人と数年間一緒に暮らしていた。
暮らしていた、って言っても彼は忙しい人だったので、あんまり家に帰らなかったり夜遅くに帰っては朝早く出かけたり…会えない日もあったりしたけれど。
私は仕事してなかったし、いやむしろ家からこの同棲してからの数年間出る事がなかったんだけど。
え?引き篭もりとかじゃないよ、それが彼との約束だった訳だし…軽く監禁…ってレベルだけどね。



それでも不満はなかった。
好きだったって言うのもあるけど、彼の仕事を応援してたし、ご飯を作ったりするのは元々好きだったから苦にはならなかった。
側にいれるだけで、彼と身体を重ねる事が出来て幸せだったんだ。



だけど、数年も続けばやっぱり不安や疑問も生まれる訳で。
本当に私達は恋人…なのだろうか、とか変な事を考えてしまったの。
ある意味、家事をやっている=家政婦 みたいだし、
身体を重ねる=セフレ みたいじゃない?
考え出したら止まらない、そうゆう風に出来てて本当嫌だよね。
そして遂に聞いてしまったの、本人に。



『ねぇ、私の事好き?』



彼は私の口からそんな言葉が出て来るとは思わなかったんだろう。
目を見開いて驚いた表情をしていたのを今でも鮮明に思い出せる。
そして言ったのだ、私達はそんな関係じゃない、と。



それならば私達の関係ってなんなんだ。
どうゆう心境で、どうして私と何年も一緒にいたの。
私の存在は…私ってなに…?
そんな疑問が、そんな負の感情がぐるぐると私の中を巡って…。



その後は良く覚えてないんだ。
彼がベッドでぐっすりと寝ているのを確認し、ゆっくりと部屋を抜け出した。
行く宛なんてなかったのに、ただただ走った。
あの場所に居たくなくて、悲しくて虚しくて、けれど淋しくて。
良く分からない感情のまま走ったらいつの間にか街まで来て、いつの間にか降っていた雨に濡れている。



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