第1章 さよならも言えずに
私は今何処へ向かっているのだろう。
手にあるのは携帯だけ。
お金も行く場所もなく、連絡する相手もいない。
あぁ、私は孤独だ。
沢山のネオンが輝く街の真ん中で傘もささずにポツンと佇む。
あぁ、心も身体も痛い。
それでもあの場所に居るよりはマシなんだ。
長く一緒に居過ぎた、彼の住む家。
好き、だった。
一緒に居れる時間が幸せだった。
忙しい彼だけど、ご飯作って待っていて、一緒に食べて、その後身体を重ねて…。
自分は求められていると、必要な存在だと、恋人なのだと…そう勘違いしていたんだ。
「愛音…僕とお前はそんな関係じゃない。
今もそしてこれからも変わる事はない」
あはは…キツいなぁ…。
桜庭 愛音 23歳
ただ今から家出まっしぐらです。