第1章 さよならも言えずに
『ぁ…』
足下に落ちたタオルケットの中には一織君が卑猥だと言っていた(言ってない)No下着の彼シャツ姿がーーーー。
見苦しいものを見せてしまって下を向くが、一向にミツキさんからのアクションがない。
ミツキさんを見てみるとすこぶる真顔だった。
え、怖い。
「お前若い女の子がこんな格好ダメだぞ。
それに風呂上がりだろ?風邪引くからとりあえずさっきのコレ羽織っとけよ」
そう言って足下に落ちたのを拾ってもらい肩の上に羽織らせてもらった。
さっきと違い結びはせずにただ羽織るだけなので、前の閉じ目を片手で押さえる形だ。
『ありがとうございます…』
「おう。
ってそのタオルケット、一織のだよな?」
『あ、はい。
たまたまお会いして私の情けない格好を見て持ってきてくれたんです』
「あはは…情けない、と言うか何と言うか…。
あ、俺は和泉三月って名前な。
ちなみに一織は俺の弟だから仲良くしてやってくれ。
んじゃ、戻るわ。
早めに寝ろよー」
私の返答も聞かずに早足で行ってしまった三月さん。
凄い、ここに住んでる人はみんな嵐のようだ。
あ、そろそろ乾燥機も終わっているだろう。
いつまでもこんな格好で皆さんに迷惑をかける訳には行かないと思い、自分も早足で乾燥機へと向かって乾いたものを取り早々に部屋に戻ったのであった。
あの後、和泉三月は鼻血を出して部屋で倒れていたのをナギに発見されてちょっとした騒動になったのはまた別のお話。