第1章 さよならも言えずに
ナギさん…泣きながら三月さんに連れていかれちゃった。
凄い、あの小さい身体のどこにあんな力が…。
「さて、私も失礼致します」
「あ、いおりん、俺宿題わかんないところあんだよね」
「貴方って人は…いいでしょう、後で私の部屋に来て下さい」
「おー、サンキュー。
じゃーなまた明日ー」
環君はマイペースな人なんだなぁ…いおりんさん?はとても礼儀正しいというか…宿題って言ってたから、2人は高校生…なのかな。
なんかとてもパワフルな2人だった。
「よーし、リク、ソウ、俺らも部屋行くぞー。
愛音、後でお前さんの部屋に携帯の充電器持ってってやるわ」
「愛音さんっ、明日から一緒に頑張りましょうねっ」
「疲れただろう、今日はゆっくりと休んでね」
『ありがとうございます…。
明日からよろしくお願いします。
大和も…ありがとう』
そうして3人が去ると部屋には私と万里しか居なくなってしまい、しーーんと静かな空間になった。
あんなに居た人数が居なくなったからか、彼等の賑やかさ故か、少し寂しく思ってしまう私は既に絆されているのだろうか。
でも…とても心があったまった…なんかそんな感じがしたのだ、彼等と居ると。
「さ、俺らも移動しようか」
コクンと頷き、歩き出した万里の後ろに付いて行く。
彼の後ろ姿を見ると、昔は短かった髪が長くなっていた。
それだけ時間が過ぎたのか、そう思った。
部屋に着いたのか、万里の足が止まる。
「ここ、お前の部屋だから好きに使ってくれて構わないよ。
今は布団しかないし、家具とかもないけど、少しずつでも揃えて行こうか。
とりあえず明日時間ある時に買い物にでも行って日用品は揃えよう」
そこには家具は一切なくポツンと畳まれた布団が1つあるだけだった。
それでも家出をして何もない私にとっては天国みたいな部屋だ。
彼と一緒に住むようになってからはベッドだったが、元々私はお布団派なので有難い。