第1章 さよならも言えずに
「大和さんがイジられてる…」
「ヤマさん、ボケとツッコミ両方いけんだな…」
「四葉さん、そうゆう問題ではないと思いますが…」
「ほら、周りがザワザワしてんだろ?
少しはお兄さんの威厳を保たせて」
『大和に威厳も何もないでしょ。
おっさんだし、眼鏡だし、おっさんだし』
「待て、なんでおっさん二回言った。
そこはお兄さん、だろ」
『……』
「え、無言やめてっ、お兄さん泣いちゃうからっ」
楽しい、素直にそう思った。
こんな感情は久し振りだ。
誰かとこんな風に話したり言い合いしたり…固まっていた私の表情筋がゆっくりと解れていく感じがした。
「よしっ!それじゃあ早速明日から彼等と一緒にレッスンを始めようか。
マネージャーも明日来るから紹介するね。
僕の方で色々手続きとかしておくから、詳しくは万里君に聞いてくれるかい?」
『あ…はい。
すいません、お手数おかけします』
「いやいや、いいんだよ。
僕は愛音さんを応援する1人の人間として全力でサポートするからね。
それじゃあ僕はこれで失礼するよ」
「「お疲れ様でしたっっっ」」
そう言って社長はにこやかに手を挙げ、扉の奥に消えて行った。
嵐のような人だった、そんな感想だ。
でも私に目指す道を示してくれた。
そこに辿り着くかは分からないけれど、私も頑張ってみたい、そう思えたのだ。
「それじゃあ、とりあえずいい時間だし解散しようか。
愛音、お前の部屋も案内するよ」
「おっ、もうこんな時間か。
よし、明日も早いからな、部屋戻るぞー」
「今日からスウィートガールと1つ屋根の下なんて、興奮して眠れませーーん」
「いや、ナギ、寝ろよ。
んじゃ、明日から宜しくな!ほら、ナギ行くぞっっ」
「Noooo、ミツキ引っ張らないで下さーーいっっ」