第6章 夢の中
「全部は話せない・・・」
「無理しなくていいよ。話せる範囲でいいから。」
「・・・僕・・・ある人から好意を持たれていて・・・結構嫉妬深いんだ。何度も逃れようとしたけど、駄目で・・・傷も何度か付けられたことあるんだ。」
「それって・・・今までの・・・」
「うん・・・」
「虐待なんかじゃなかったのか・・・」
兄さんっていうのは言わないでおこう。
そこまでは言えない。
言えば母さんとお父さんにも話が行くかもしれない。
心配はかけれない。
「・・・うん。きっと僕と付き合うことになれば、柊も何かしら危害が及ぶと思う。それだけは嫌なんだ。僕も柊の事好きだから。勿論付き合いたいって思ってる。でも、駄目なんだ。だから・・・柊とは付き合えない。」
「綾斗・・・どうして通報しないんだ?」
「・・・ごめん、そこまではちょっと話したくない。」
柊が悔しそうに俯いて拳に力を入れる。
これで、柊は諦めてくれる。
また、友達として元通りになれる。
「話してくれてありがとう。でも・・・その話聞いて余計諦めれなくなった。」
「え・・・どうして・・・」
「俺、好きな人が苦しんでるの見てられない。・・・俺さ、自分の命くらい自分で守れるよ。その人がどんな人か知らないし確かに危険かもしれない。でも綾斗はずっとそれに耐えてきた。もう解放されてもいいと思う。自由に恋したっていいと思う。」
柊が真剣な目で訴えかけてくる。
その表情を見て僕の胸はどんどん熱くなった。
「今だって綾斗助けてほしそうな顔してるよ・・・そんな顔されたら放っておけない。俺、綾斗の事絶対助けてやるから。ずっと隣で支えてやるから。だから・・・もう一度考え直してくれないか?」
柊に言われるまで気づかなかった。
僕泣いてる・・・
「綾斗、自分に正直になって。綾斗はどうしたい?周りが何を言っても無視して。じゃないとずっと苦しいままだ。」
「僕・・・」
ずっと苦しかった。
自分の気持ちに素直になれなくて、柊を傷つけて。
我慢して。
でももう我慢なんてしたくない。
「やっぱり柊が好きっ・・・我慢なんてできないよ・・・」
「うん・・・俺もだよ・・・綾斗・・・付き合って下さい。」
「うっ・・・はいっ・・・よろしくお願いします・・・」
涙はどんどん溢れ出てきて止まらなかった。