第4章 僕の従兄弟
昨日は一睡も出来なかった。
ずっと柊との事を考えていた。
うとうとしながらホームに並ぶ。
いつものようにイヤホンをして電車を待つ。
「ねむ・・・」
ぼんやりと音楽を聴きながら電光掲示板を眺めていると肩を叩かれた。
片方のイヤホンを外し、振り返る。
「おはよう、綾斗。」
柊だった。
「うん・・・おはよう。」
まさか話しかけてくれるとは思わなかったから嬉しい。
けど、やっぱ気まずいのには変わりない。
「あのさ・・・昨日はごめん。変なこと言って・・・」
「変なことって?」
柊が謝ってきた。
別に悪くないのに。
「虐待を受けてるって・・・」
僕は柊の方に向けていた顔を正面に戻してイヤホンをはめる。
「別に・・・気にしてない。」
上手く話せない。
話したいのに。
もっと声を聞きたいのに。
「・・・そっか。」
その後も空気は重く、学校に着いても柊と会話をする事はそれ以降無かった。
仁達も気になっているのか、あまり話しかけてこなかった。
またこれだ。
また1人。
あんなに学校が楽しくなったと思ったのに。
ちょっと息がしずらい。
初めは学校なんてどうでもよかったのに。
友達なんて要らないって思ってたのに。
こんなに辛いなんて。
携帯が震える。
メールだ。
『今日会える?』
賢二さんだ。
久しぶりに連絡を取ったかも。
・・・。
久しぶりだし・・・。
『いいよ。』
「綾斗。」
後ろから声をかけられ驚く。
この声は柊か。
帰ろう、と言う柊の声を遮って僕は立ち上がった。
「ごめん。ちょっと用事あるから。」
「だったら待ってる。」
「いや、遅くなると思うから。じゃあ。」
つい冷たく払ってしまった。
その時に一瞬、柊の寂しそうな顔が見えた。