第4章 僕の従兄弟
柊の握る手の力が強まってる。
僕を見つめる真っ直ぐな目も真剣だ。
その視線に耐えれなくなり目線を下げる。
ここで帰らなかったら何されるか・・・
「・・・何言ってるの。そんなことない。早く帰りたいんだ。」
「嘘つくなよ。」
「本当だよ!離して!」
振りほどこうと腕を動かしたが、柊の力には敵わない。
「綾斗!無理するなよ!その傷・・・虐待でも受けてるんだろ?」
「っ!」
それまで下げていた顔を上げると柊の目はさっきまでとは違って泣きそうだった。
僕もつられて目頭が熱くなる。
「母さんと父さんはそんな事しない!勝手に決めつけるなよ!」
無理やり振りほどいて部屋を出た。
早く柊から離れたかった。
僕は会計を済まし、家まで走った。
柊の顔が脳裏に残ってる。
それを思い出す度に涙が溢れ出そうになった。
気付かれたくなかった。
きっと僕は嫌われた。
僕は涙を誤魔化す為に全力で走った。
「ただいま・・・」
「綾ちゃん!遅かったわね。ご飯出来てるから手洗って来なさい。」
「うん。ごめんね。」
着替えようと階段を登ったとき、部屋の前に兄さんがいた。
怒ってる・・・
「おかえり。遅かったね。」
「う、うん。ちょっと学校で日直の仕事してて。心配かけてごめんなさい。」
さすがに嘘ってバレちゃうかな。
すると兄さんは組んでた腕をそっと下ろし、怒ってた顔も優しい笑顔に変わった。
「なんだ。だったらよかった。俺、先にお風呂入ってるね。」
「うん・・・」
よかった。
今日は機嫌がいい。
下手したらもっと酷い目に合ってた。
兄さんが階段を下りて行った後、力が抜けてしまった。
・・・柊に酷いことしちゃった・・・