第4章 僕の従兄弟
「ふぅ・・・」
2時間くらい経っただろうか。
かなり歌った。
ストレス発散に来たはずなのに時間が過ぎていく度に不安が押し寄せる。
「もうすぐ20時か・・・帰るか。」
「・・・もうそんな時間・・・」
「早いよな(笑)」
帰りたくない・・・
もっと一緒に居たい。
兄さんに会いたくない。
「綾斗?大丈夫か?」
「え?」
「いや、急に黙り込むから・・・」
「なんでもないよ。」
「・・・ごめんな、無理に誘って。もう帰るか。」
「っ!そんなことないよ!?」
むしろ嬉しかった。
カラオケなんて来るの久しぶりだし。
それに好きな人と二人で。
無理なんてしてない。
「そっか・・・もう遅いし帰る?」
帰らないといけない。
母さんも心配するだろうし。
でも・・・
帰ったらまた・・・
「帰りたくない・・・」
思わず言葉にしてしまった。
慌てて口を両手で塞ぐ。
柊に聞こえてた?
「綾斗・・・今・・・」
驚いた顔をしている。
柊がそのまま口を開こうとしたとき、僕の携帯が鳴った。
発信者は兄さんだ。
「ご、ごめん。電話・・・」
「あぁ・・・」
電話を取り、部屋の外に出る。
「もしもし・・・」
「綾斗・・・どこにいるの?今何時か分かってる?」
「ごめんなさい。すぐ帰ります。」
「・・・もしかして・・・柊って奴と一緒?」
バレてる?
そんなはずは・・・
「ち、違うよ!僕1人!遅くなってごめんね。すぐに帰るから。」
そう言って電話を切る。
早く帰らなきゃ。
部屋の中に戻り会計札を持つ。
「・・・柊、僕帰る。」
「待って。」
会計札を持った腕を掴まれた。
ドアノブにかけていた手も離れ、再び部屋の中へ戻される。
「なに?」
「・・・綾斗・・・今日俺の家に泊まりなよ。」
「え・・・?急になに・・・」
「帰りたくない・・・そう言ったのは綾斗だろ?」
「うっ・・・」
やっぱり聞こえてた。