第4章 僕の従兄弟
兄さんは初めはこんなんじゃなかった。
凄く優しくて、勉強も教えてくれて、料理もできて。
友達だって沢山いる、周りが憧れるような人だった。
僕だって兄さんを頼りにしてた。
けど、兄さんが高校を卒業する前に変わってしまった。
「綾斗。何してるの?」
「皇さん。勉強だよ。明日試験なんだ。」
「綾斗頑張るね。けど、もうすぐご飯だよ。」
「分かった。すぐ行くね。」
周りから見れば普通の兄弟。
血は繋がってないけど、兄弟のように仲が良かった。
兄さんは元々両親が居なくて、叔母さんに引き取られた。
その後、直ぐに事故で叔母さんと叔父さんが亡くなり、僕達の家に来た。
「皇さん、もうすぐ卒業か。」
「うん。大学も遠いから一人暮らしになるけど、綾斗は寂しくない?」
「・・・少し・・・かな・・・」
「少し・・・か・・・」
「どうしたの?」
「いや?・・・綾斗さ、俺の事いつまで名前で呼ぶのかな?俺、綾斗のお兄ちゃんのつもりなんだけど・・・」
その言葉を発する兄さんの目が物凄く怖かった。
あんなに優しかった兄さんの目は、どこにもなかった。
「え?・・・皇さ・・・」
両頬をがっしりと片手で捕まれる。
「兄さん・・・でしょ?」
「・・・に、兄さん・・・」
「よく出来ました。」
直ぐに放してくれた。
その後も怖くて眠れなかった。
その日から卒業してから大学に入学するまで間、僕はずっと兄さんに対して恐怖を感じていた。
初めは僕に危害を加える様なことはなかった。
けど、入学に近づくに連れ、僕への暴行が始まった。
「綾斗?俺、綾斗の事大好きだよ?けど、どうしてそんなに避けるの?」
「ごめんなさ・・・お願い・・・放して・・・苦し・・・」
上に馬乗りになって首を絞められる事が多かった。
「ゲホゲホッ!はぁはぁ・・・ごめんなさい・・・許してください・・・」
「綾斗は俺の事嫌い?」
「っ!・・・ううん・・・大好きだよ?」
そう言わざるを得なかった。
というか、言えと言われているようだった。
「よかった。」
その時は体を求められることは無かった。
兄さんとの事がストレスのきっかけとなって、僕は出会い系を始めた。
賢二さんと出会ったのもそれがきっかけだった。