第14章 本音と嘘
兄さんがお医者さんを呼んでくれて、改めて検査をしてくれた。
声が出るようになったから、もう少しリハビリを続けて退院する事になった。
「良かったな。退院できるって。」
「うん・・・」
「こうなったのも・・・俺のせいだ。俺が弱いから。」
兄さんが僕の寝るベッドに腰を掛ける。
今まで見たことないような表情。
凄く悲しんでる。
「本当にごめん。・・・嫌いになったよな・・・」
「兄さん?」
やっぱりいつもと違う。
というより、昔の兄さんだ。
僕の大好きな。
「俺・・・1人になるのが怖くて・・・また大事な人を無くすんじゃないかって思って。だからってあんな酷いこと良くないよな。謝って許されることじゃないことはわかってる。死にかけたんだ。・・・でも綾斗とずっと一緒にいたい。」
兄さんは2度も家族を失った。
僕達は血の繋がっていない兄弟。
生物学的に言えば赤の他人だ。
でもこれまで一緒に過ごしてきた。
家族同然のように。
今まで僕に酷いことをしてきたのも恐怖心からだ。
強い独占欲がそうしてしまったんだ。
「僕だって・・・兄さんのこと・・・好きだし、・・・家族だと思ってる・・・」
「もうこれ以上綾斗を傷つけない。嫌がることはしない。だから俺から離れないでくれ。・・・1人にしないで・・・約束するから。」
兄さんが僕に抱きついてきた。
こんな兄さんは久しぶりに見た。
「うん・・・わかった。いいよ。」
もしかしたら・・・兄さんは・・・