第14章 本音と嘘
真織に会えたのは嬉しかった。
もう来てくれないと思ってたから。
それなのに、僕は冷たい態度を取ってしまった。
こんな状況で笑顔なんて作れない。
声もまだ出ない。
「よっ!綾斗!」
「っ!」
仁!
どうしてここに・・・
真織かな?
仁に会えたのが嬉しくて顔が緩んでしまう。
試合はどうなっているんだろうか。
松村くん頑張っているかな。
「真織に聞いたよ。声出ないんだってな。」
『馬鹿だよね。精神的にやられちゃってるみたい。』
「俺だって強い訳じゃねぇから、無理すんなよ。思ったことは口に出したがいいし、一人で悩んでたら余計に苦しくなる。」
『ありがとう。』
どこまで聞いているんだろうか。
兄さんのことも知っているのかな?
「あまり話したくないかもしれないけど・・・どうして自殺なんか・・・」
やっぱり気になるよね。
でも・・・正直には言えない・・・
「?綾斗?」
考え込んでしまい、字を書く手が止まった。
『ごめん、まだちょっと。』
「そうか。・・・真織とは何か話したか?あいつ、学校でもずっと暗くて周りも心配してるんだ。さっきもすれ違ったけどどこか悩んでいるように見えた。」
別れ話した事は知らないのか。
あまり言いたくないよね。
仁達も試合あるから余計な心配をかけたくなかっただろうし。
「別れるとか・・・ないよな?」
仁は鋭いな・・・
『実は別れようって話した。』
「は?まじかよ・・・どうして・・・あーその、話したくないならいいんだけどよ・・・」
仁は申し訳なさそうに俯きごめん、と謝った。
『このまま付き合ってたとしても幸せになれないって思ったから。』
『真織には幸せになって欲しい。』
『これ以上迷惑かけられない。』
仁は僕の渡した紙を取りページを捲っていく。
そして、呆れたかのようにため息をついた。
「あいつにとっての幸せはお前だと思うけど?」
どういうことだろうか。
僕が真織の幸せ?
「綾斗は本当に真織と別れていいのか?それで幸せなのか?楽になれるのか?」
うっ・・・
そんなの嫌に決まってる。
でも、真織が幸せになるなら僕は我慢出来る。
僕には兄さんがいるから・・・これ以上は一緒にいられない。
「綾斗・・・今は誰もいない。正直に話してみろ。」
僕は・・・
「わ・・・かれ・・・た、くな・・・い・・・っ」