第14章 本音と嘘
綾斗side
「綾斗・・・」
兄さんの呼ぶ声がする。
右手が僅かに暖かい。
徐々に音と視界がはっきりとしてくる。
1番に目に入ったのは点滴棟。
僕の左腕に繋がっている。
息がしずらい。
首も苦しい。
「綾斗!!」
兄さんが腫れた目で嬉しそうに笑った。
クマも酷い。
寝れていないのだろうか。
「よかった・・・本当に・・・」
僕、死ななかったんだ。
まだ生きてる。
「綾斗、今から先生来るからな。どこも痛くないか?苦しくない?」
首が苦しい・・・
あれ・・・
声が出ない。
口は動くのに。
それに兄さんも気づいたのか、顔が青冷める。
「あ、綾斗・・・声・・・出ないのか?」
僕は必死に声を出そうと口を開けるが出ない。
どうして・・・
「恐らく、ストレスからかと。」
病室にお医者さんが入ってきた。
身体に異常が無いか聴診器を使ったり、心電図のモニタを見たりしている。
「うん、他に異常は無いみたいだね。紙とペンを用意しておこう。顔の傷と首の跡はまだ消えてないみたいだ。もう少し入院して、様子を見よう。」
僕は声が出ない為、頭を軽く下げた。
先生は家族で話したいだろうからと、病室を出ていった。
その後すぐに母さんと父さんが病室に入ってきて僕を抱きしめた。
兄さんはそれを後ろで眺めている。
「よかった。・・・どうしてあんなことしたの・・・」
あんなこと?
「学校で何かあったのかい?・・・いじめとか・・・」
いじめ?・・・
どうして急にそんなこと・・・
「お願い教えて・・・自殺しようと思ったきっかけ・・・母さん達が解決してあげるから。だから二度とあんなことしないで・・・」
自殺・・・?
僕は自殺未遂をしたことになっているの?