第13章 矢野綾斗という男
「柊真織です。よろしくお願いします。」
やっと彼に会える。
しかもクラスも一緒で隣の席。
今までよりも近くで見れて嬉しい。
やっぱり綺麗な顔をしている。
「よろしく。」
勇気を振り絞って声をかけてみる。
でも、彼は俺の事を無視して窓の外を眺めている。
聞こえなかったのか?
「ねぇ。」
「・・・。」
全然こちらを振り向いてくれず、耳に息を吹きかけてみた。
「ひゃあ!?////」
顔を赤く染め、振り向いてくれた。
可愛い。
思っていた以上に可愛い。
名前を矢野綾斗というらしい。
名前を知れた。
できることなら呼び捨てで呼びたい。
彼にも名前で呼んで欲しい。
初めは避けられていたが、何とか友達になることまでは出来た。
それでもぎこちない。
仁に聞いたところによると、影ではモテているのに近づくなオーラが出てて皆声をかけずらい存在だったようだ。
確かに思っていたより冷たくて、1人が好きなように見える。
少しずつ心を開いてくれて、綾斗の顔には笑顔が増えた。
その表情を見て、やっぱり好きだなと改めて思う。
「父さん、俺クリスマスに告白する!」
「お!いいな!しっかり想いを伝えろよ!」
「うん。もし失敗したら友達に戻れないかも。」
「大丈夫だ。自信持て!」
仁にも相談はしていた。
父さんと同じことを言っていた。
今までに何度も綾斗に仕掛けてみたことはあった。
どれも空振り。
「でも好きな人いるんでしょ?いいの?」
「いいよ、綾斗だし。」
流石に気づいてくれると思った。
好きな人は綾斗だしっと言う意味で言ってみた。
でも。
「そっか。」
やっぱり気づかない。
本人には直接話した方が伝わりそうだ。