第12章 孤独
兄さんに家まで手を引かれ、部屋に入る。
家には誰もいない。
母さんは買い物にでも行っているのだろうか。
兄さんが帰ってきたから少し豪華なものにしたいのかもしれない。
「で?結局あの子と付き合ってるんだ?」
「うん・・・」
「へぇ・・・聞いてないんだけど・・・あと、許可してない。」
僕はベッドの上で正座をして、扉の前に立つ兄さんに謝る。
それでも許してくれる様子はない。
兄さんは僕にゆっくり近づき、頬にビンタをした。
久しぶりのこの感覚。
音が一瞬聞こえなくなる。
「いっ・・・ごめんなさい・・・」
威力が凄くてベッドに倒れ込んでしまう。
「綾斗?綾斗は誰のだっけ?」
「・・・僕・・・は・・・」
兄さんの・・・?
本当に?
僕は真織の恋人だ。
それに、物じゃない。
1人の人間だ。
僕だって自由に生きたい。
「誰のものでもない・・・」
「・・・綾斗?」
「なるんだったら・・・真織がいい!」
僕は兄さんを押しのけ携帯を持ち、扉に向かって走る。
やっぱり真織がいい。
真織といたい。
ドアノブに手をかけたとき、兄さんに足を引っ張られ、勢いよく額をドアにぶつけた。
一瞬意識が飛び、目の前がクラクラと歪む。
「何やっての?・・・舐めてる?」
「ちが・・・うっ!」
何度も頬を拳で殴られる。
「あぅ・・・にい・・・さ・・・」
上に乗ってきて僕の動きを止められ、逃げられない。
転けた時に手から落ちた携帯が光る。
『綾斗。話そう。』
『今どこ?』
『不在着信×5』
『電話出て。』
真織から連絡が途切れずに来ている。
「ま、お・・・たすけ・・・まお・・・」
「ねぇ、今目の前にいるの俺なんだけど?」
「うっ!げほ!」
お腹を殴られ、一気に胃液が上がってくる。
助けて・・・真織・・・
会いたい・・・
真織に会いたい。
「大丈夫だよ、綾斗。俺のものだから、守ってあげれる。何も心配しなくていいよ。」
僕の制服のネクタイを解き、首を締められる。
慌てて手を入れて完全に締まるのを防ぐ。
「うっ・・・かはっ・・・」
全然駄目だ。
気管が締まる。
意識が飛ばないように堪えていた時、頬に暖かい雫が落ちてきた。
「もう俺から奪わないでくれ・・・1人にしないで・・・」
兄さんが泣いている。