第12章 孤独
「もう・・・1人は嫌だ。」
締める力はどんどん強くなる。
1人にしないで・・・
その言葉に疑問を抱く。
どうして兄さんは泣いているんだ?
・・・もしかしたら・・・
これまで家族を失ってきたのが蘇ってきたのかな。
本当の両親を無くし、引き取られた先でも亡くし・・・
その後に出会った僕まで失うことに恐怖を抱いているのか。
僕は両手をネクタイから離し、兄さんの顔に手を添える。
兄さんは怖いだけなんだ。
だから・・・こんなに必死に・・・
「にいさ・・・だい、じょうぶだよ・・・兄さんを・・・1人にしないから・・・」
「は・・・?綾斗?」
「かはっ・・・うっ・・・にいさ・・・僕は・・・兄さんが好きだよ・・・」
僕は兄さんが好きだ。
勿論、それは家族としての好き。
こんな兄さんは怖いけど、僕が昔から知ってる兄さんには変わりない。
優しくて、強くて。
そんな兄さんが僕はずっと好きだった。
だから、前みたいに戻って欲しい。
「にい、さ・・・」
既に両手には力が入らず床に落ちてしまった。
これ以上は耐えれない。
とうとう意識は途切れ、最後に聞こえた兄さんの声は震えていた。
「そんな・・・いやだ・・・あぁぁぁぁぁ!」
これ以降、僕は目を覚ますことは無かった。