第2章 柊真織という男
やばい、どうしよ。
今更だけど、この人の名前わかんない。
お昼ご飯を食べながら雑談をする。
「お前ら知り合いだったのか?」
「いや?俺から声掛けただけ。」
「へー。本当に尊敬するわ。」
全然会話に入れない。
名前もわかんないのに、何を話せばいいの?
「なんで尊敬するんだ?」
「逆に転校してきて不安とかなかったのかよ?」
「あったよ。けど・・・綾斗見て不安無くなったんだよな。不思議と。」
「なんだよそれ。」
「仲良くなりたいって思ったんだ。」
なにそれ・・・
恥ずかしくなって顔が赤くなる。
「・・・なるほどな。わかるかも。」
「え?どういう・・・」
思わず聞いてしまった。
「うーん・・・矢野ってさ、何考えてるのかわかんないんだよな。常にクールな感じだろ?実際どんなやつなのかなって。」
「ぼ、僕・・・そんな感じなの?」
「うん。・・・ぷはは。お前口に付けすぎ。」
「え!?////」
慌てて口を拭う。
「取れたよ。・・・矢野ってさ・・・綾斗ってさ、意外とおっちょこちょいなんだな。」
「そ、そんな事ない!////」
てか呼び捨て!?
いきなり過ぎない!?
これが普通なの?
「・・・綾斗はクールって言うよりは可愛いよ。」
「ひ、柊?!////」
また可愛いって・・・
「可愛い・・・確かにそうかもな。」
2人して・・・
顔がさらに熱くなる。
それを隠すために慌てて弁当を食べ終える。
「ぷくく・・・リスかよ。」
「!?////」
リス・・・
「中西ー。」
中西?
この人の名前?
違うクラスメイトがバスケットボールを持って話しかけてきた。
「今日も賭けようぜ!」
「またかよ。・・・お前らも来るか?」
中西君が僕と柊に声をかける。
周りは驚いている。
「綾斗が行くなら。」
「ひ、1人で行きなよ・・・」
「・・・よーし!2人とも強制参加なー。」
中西君が手を引っ張る。
「え、待って・・・中西く・・・」
「仁でいいよ。」
「え?」
「友達だろ?」
友・・・達・・・
僕とは縁が無い言葉だった。
友達なんて要らない。
そう思ってたのに・・・
「・・・うんっ・・・」
少し照れくさかった。