第10章 特別だから・・・
「Aコートの記録です。」
ふぅ、とりあえず1つ目の仕事は終わった。
この後は競技に入って、その後また記録係に戻らないと。
思っていた以上にレクレーションは盛り上がって、学年関係無く仲良くなっていた。
「せんぱーい!次ですよ!」
「う、うん!今行く!」
松村くんに呼ばれ、走ってコートに向かう。
今から行うのはドッチボールだ。
球技はどうしても苦手。
早めに当たって外野に出たい所だ。
実は昨夜眠れなかった。
仕事を緊張してか、レクレーションが楽しみでか・・・
それともまだ柊との事が引っかかっているのか。
「先輩、顔色悪いですよ?」
「昨日眠れなかったからかな?でも大丈夫だよ。」
「体調悪くなったら教えてくださいね。」
既に頭が痛い。
激しく痛むわけでは無いが、歩くと響く。
周りの声援も僕の頭をズキズキと痛める。
何とか競技は勝ち、僕は急いで仕事に戻る。
「あの、すみません、Bコートの記録用紙ください。」
「はい、お願いします。」
気のせいか目の前が歪んで見える。
いや、大丈夫。
周りに迷惑はかけられない。
「ちょ、先輩!すごい汗ですよ!?保健室に向かった方が・・・」
「平気だよ。変わってもらうのも申し訳ないし、直ぐ治まるよ。」
松村くんを押しのけ持ち場に戻る。
「いけー!」
「そこだ!」
痛い・・・
先程よりも酷くなってる気がする。
「はぁはぁ・・・うっ・・・いた・・・」
目の前がグラグラと歪み始めた。
立っていられなくなり、膝から崩れ落ちてしまった。
「先輩!?」
「綾斗くん!」
何とか声だけはハッキリと聞こえる。
「はぁ、はぁ・・・」
身体が熱い。
「綾斗!」
誰かに抱えあげられ、運ばれている。
でも意識は朦朧としていて、何も考えれない。
「はぁはぁ・・・」
「何やってんだよ!こんなになるまで!」
誰?
柊?
そんなわけないよね。
だって柊は・・・
「もう着くからな!」