第10章 特別だから・・・
「ここだよ。中に入ろ!」
「・・・うん・・・」
ここ、前に柊と来た所だ。
席もその時と同じ位置。
「ここのパンケーキが美味しいんだ。綾斗くんも同じものでいい?」
「うん・・・ありがとう。」
知ってる。
ここのパンケーキ。
まだ味を覚えてる。
あの日の柊の格好も、笑顔も、声も。
「お待たせしました。」
僕達のテーブルに2つパンケーキが置かれる。
「食べよ!」
ナイフで1口サイズに切り分け口に運ぶ。
うん、変わらない。
この味。
思い出して思わず涙が出る。
「え、綾斗くん・・・ごめん、口に合わなかったかな?」
「ううん・・・すごく美味しいよ。ただ・・・この場所前に柊と来たことがあって。」
「そうだったんだ・・・ごめん、余計に辛い思いさせちゃったかな。」
「あかりさんは悪くないよ。寧ろ感謝してる。ありがとう。」
柊の事は暫く忘れよう。
きっとその日が来ればまた元通りになれるはず。
辛いけど、このまま考え込んでると前に進めない。