第10章 特別だから・・・
「ねぇ、柊ー。機嫌直してよ。」
僕を置いてさっさと歩いていく。
こんなに怒ることは始めてだ。
「別に機嫌悪くない。」
「じゃあ、どうしてそんなに歩くの早いの。」
僕が問いかけると足を止めた。
けど、こっちは向かない。
「俺の事、本当に好き?」
「当たり前じゃん。」
「じゃあさ、これ以上、他の人に思わせ振りな態度取るのやめて。」
「え、そんなつもりは・・・」
僕、そんなに思わせ振りな態度取った?
いつ?
全く記憶にない。
「俺たち、少し距離置こう。」
「え?」
距離を置くって・・・
「どうして・・・」
「正直、綾斗がわからない。同じクラスになった子を呼び捨てで呼んだり。俺、綾斗に下の名前で呼ばれたことない。」
名前・・・?
もしかしてそれで嫉妬して?
でも、だからって距離置く?
「やだ・・・」
「俺の方が嫌だ!これ以上、綾斗が他の人と仲良くしてるのとか見たくない!それに呼び捨てとか!」
いきなり柊がこちらを振り向いて叫んだ。
怖い。
僕は驚いて肩が弾んだ。
「・・・ごめん・・・」
それ以外の言葉が出なかった。
「少し距離置けば、本当のお互いの気持ちが分かるかもしれない。・・・だから、暫くは離れよう。」
「・・・う、ん・・・わかった。」
本当は嫌なのに。
ここまで言われると反論出来なかった。
帰り道はお互い気まずくて家に着くまで無言だった。
僕、なんてことしたんだ。
柊が怒るのも無理ない。
だって、恋人である柊を1度も名前で呼ばなかったんだ。
それなのに、他の子は呼び捨てだ。
最低だ。