第9章 影
次に目が覚めた時は病室だった。
あの後、病院に運ばれて入院した。
特に異常は無く、脳震盪も起こしてなかった。
傷が治るまで入院することにした。
母さんと父さんが慌てて病室に入ってきたときは驚いた。
きっと警察から連絡が行ったんだ。
「あの日家を空けたから・・・ごめんね。まさかこんなことになるなんて。」
「体調は大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ。・・・その・・・僕も黙っててごめん。相談するのが怖くて。」
初めから話しておけばよかった。
母さん達に話を打ち明けたとき、思っていた反応とは違った。
警察にも事情聴取され、全て話した。
けど、兄さんとのことは言えなかった。
今回の事は公にはしない約束にしてもらった。
学校にも行きにくくなるだろうからと言う理由で考えてくれた。
「綾斗・・・傷まだ痛むか?」
「ううん、もう平気。・・・柊、助けに来てくれてありがとう。もう少し遅かったらたぶん、死んでた。」
後から聞いた話だけど、どうやら、僕を殺して自分も死ぬ気だったらしい。
これ以上、僕が他の男の人の所に行かないようにするために。
「明日から春休みに入るから、課題とかまた持ってくるな。じゃあ、明日。」
「うん。ありがとう。」
結局、春休みまでにいい思い出を作れなかった。
クラス替えがあるのに、何も出来なかった。
まだ仁達と過ごしたかったのに。