第9章 影
「ぁ・・・かは・・・」
顔が血だらけだ。
鼻血と口の中を切ったものでドロドロだ。
「出すよっ・・・」
「ぃ・・・うぅ・・・」
痛みが酷くもう藻掻く気力すら無くなった。
いっその事死にたい。
こんな瀕死状態でいる方が何倍も辛い。
遠くからパトカーのサイレン音が聞こえてきた。
こちらに向かっている。
「綾斗!いるのか?!」
微かに柊の声がした。
玄関の前にいるんだ。
鍵閉めてしまったから入って来れないんだろう。
「くそ・・・執拗い奴。」
「に・・・げて・・・」
男の人は荷物からナイフを取り出した。
やっぱり僕も殺す気だったんだ。
柊が危ない。
「にげて・・・ひいらぎ・・・」
声も全く出ない。
喉も痛い。
でも柊に伝えなくちゃ。
男の人が僕の部屋からナイフを持って出ていこうとしていた時、窓がパリーンと割れた。
そこから鉄バッドを持った柊が入ってきた。
1階からどうやって登ってきたんだろうか。
「この・・・クソ野郎!」
柊がバッドを振りかざし殴りかかろうとしている。
ダメだ。
相手はナイフを持っている。
僕は思わず目を瞑ってしまう。
ゴン!
鈍い音が聞こえ、目をゆっくり開けると柊は両足で立っていた。
男の人は倒れている。
無事・・・だったの?
「綾斗!・・・こんなボロボロに・・・遅くなってごめんな・・・今救急車呼ぶ。耐えてくれ。」
しばらくすると部屋には警察も入ってきた。
救急車が来るまで柊はずっと僕の体を温めてくれていた。
そんな温もりも遂には意識を失い、現実なのかも分からなくなった。