第9章 影
「綾斗、入るぞ?」
「うん。」
退院の準備をしていると柊達が入ってきた。
仁もいる。
わざわざ遠いのに、電車を使って来てくれたようだ。
「皆・・・どうして・・・」
「退院おめでとう。この後、皆でご飯食べるんだけど・・・綾斗も来ない?」
「勿論、仁の奢りで。」
「はぁ?!綾斗だけだ!」
もう皆とはあまり会えないって思ってた。
話すことも遊ぶことも。
減ってしまうって思ってた。
でも、こうやって誘ってくれてる。
「うん・・・行きたい。」
「なんで泣いてんだよ(笑)」
「うぅ・・・だって・・・最後まで皆と過ごせなかったから・・・嬉しくて。ありがとう。」
「・・・お礼言うなら柊に言いなよ。」
「あ!仁!それは言わないって!」
柊が慌てて仁の口を押え顔を赤らめている。
その光景がまた眩しくて見えて、より嬉しくなる。
「柊・・・ありがとう。」
「お、おう・・・////」
「誰かさんが『綾斗を元気付けたいから何かしてあげられないかな・・・』ってずっと落ち込んで寂しそうだったからなー。」
そうだったんだ。
気づかれてたのかな。
僕の気持ち。
「ほんと、お前ら仲良いよなー。」
「類は友を呼ぶってやつ?イケメン同士。」
「間違いねぇ(笑)」
皆が僕達のことをからかい始めた。
少し嬉しい。
不安だったけど、クラスが変わってもこの人達となら何も変わらない気がする。
「ほら!もう行くぞ!////」
柊の顔はより一層赤くなり、僕の荷物を抱えてくれた。
そういう所なんだよな。
僕は皆が後ろを向いたのを確認して、柊の服を軽く引っ張った。
「ん?」
「柊、大好き。」
そうコソッと耳元で囁いた。
「・・・ぷ、はは!顔真っ赤!」
「あ、綾斗っ・・・ずる・・・い・・・」
「ほらほら、置いてかれるよ。」