第9章 影
「おはよー。おふたりさん。」
「おはよう仁。」
珍しく寝癖を付けた仁と下駄箱で挨拶を交わす。
今日は日直だからか、少しだるそうだ。
朝から仕事があるから大変だ。
「じゃあまた後でな。」
「うん、後で。」
先に上履きを履き終えていた仁は職員室へと向かった。
僕達も履き変えようと下駄箱を開ける。
「え・・・」
扉を開けると下駄箱の中いっぱいに写真が貼られていた。
昨日の僕と柊の写真だ。
キスしてるところまで写ってる。
昨日教室で聞いたシャッター音も間違えじゃなかった。
僕の顔はハッキリと写っているが、柊の顔は塗り潰されている。
『ずっとみてるよ』
赤い字で書かれた紙も貼られている。
「うっ!」
慌てて扉を閉める。
気分が悪くなり、口を押えトイレへ駆け込む。
上履きを履かずに靴下のままだ。
床の冷たさが伝わってくる。
「綾斗っ!」
なにあれ・・・
僕、ずっと付けられてる・・・
「大丈夫か?」
トイレで戻ってきたものを全て吐き出し、柊が背中を摩ってくれる。
柊を巻き込んじゃってる。
柊の身になにか起きたら・・・
「ごめん・・・うっ」
「何があったんだ?」
「・・・下駄箱の中に・・・また・・・」
「・・・待ってろ。」
柊が走って下駄箱へ戻って行った。
確認するためだろう。
幸い周りにはまだ生徒が少なかったから良かった。