第9章 影
「はぁ、美味しかったぁ。柊ありがとう。」
「喜んでもらえてよかったよ。そろそろ帰ろうか。」
「うん。」
駅まで歩いて向かい、いつもより遅い時間の電車に乗る。
ピーク時間が過ぎたのか、いつもより人が少ない。
おかげで余裕で隣同士座れた。
いつもは立ってることが多い。
もしくは柊が僕に席を譲ってくれる。
「なぁ、綾斗。」
「なに?」
「もうすぐクラス替えだろ?その・・・綾斗はどう思ってるのかなって。」
少し寂しそうに俯いて僕の手を握ってくる。
「正直、不安だよ。それに、同じクラスになれなかったらきっと僕も寂しいと思う。でも、登下校は一緒だし、別に別れるわけでもないから。」
「うん・・・そうだよな。ごめん、急に。」
「ううん、僕も少し気になってたから。話せてすっきりしたよ。」
僕だけじゃなかったんだ。
柊も僕と同じ気持ちだ。
そんなことを話しているとあっという間に最寄り駅に着いた。
そこからはいつも通りに家まで送ってくれる。
「じゃあ、また明日な。」
「うん、また。」
残り1週間。
折角なら楽しみたい。