第9章 影
1時間すると柊は帰ってきた。
心配してたけど、よかった。
ちゃんと帰ってきてくれた。
「柊。大丈夫だった?」
「うん、別になんともなかったよ。あと、ごめん。」
どうやら、見つけられなかったようだ。
途中怪しい人影を見かけたがすぐにまた見失ったみたい。
「わざわざありがとう。先生にバレなかった?」
「余裕。保健室に行ってたって勘違いしてたから。」
結局、足はつかめなかった。
やっぱり学校まで来てたんだ。
全部僕の事は知られている。
柊の事も。
「綾斗、今日は少し寄り道して行かねぇか?」
「うん。けどどこ行くの?」
「近くに新しくカフェで来たらしいから。綾斗が好きなケーキもある。」
「い、行く!」
ケーキ!
早く食べたい!
カフェが出来てたなんて知らなかった。
きっと、僕を元気付ける為に誘ってくれたんだ。
「ねぇ、柊。」
柊の横を歩きながら話しかける。
手が触れそうだ。
繋ぎたい。
でもここじゃ誰が見てるか分からない。
「なに?」
「ありがとう。」
「なんの事だ?」
「ふふ、何でもないよ(笑)」
我慢しよう。
すると、柊が僕の手を握ってきた。
「え////」
「ずっと手見てるのバレバレ。繋ぎたいんだろ?」
「う、うん////」
「ふっ・・・可愛い。」
僕に微笑みかけ、腕を引っ張りキスをしてきた。
ベッドの上でするような深いキス。
誰か見てるかもしれないのに。
でも・・・今はこのままでいたい。
「はっ・・・ごめん、急に。」
「だ、大丈夫・・・だよ////」
「早くカフェに行こうか////」
「うん////」
2人顔を赤らめて手を繋いだまま歩く。
少し初々しく感じる。
お互い恥ずかしくて僕達は何も喋らずに、ただ顔を赤くしたままカフェに向かった。