第9章 影
「はぁー学年末試験も終わったし、もうすぐ春休みかー。」
「あっという間だね。」
仁が言う通り、春休みまであと1週間。
春休みが終わればクラス替え。
受験生。
柊とはクラス離れちゃうのかな。
成績で分けられるだろうから離れそうだ。
「・・・クラス替え、嫌だな。」
「うん、緊張するね。」
「もし、柊と離れたらどうする?」
「離れても変わんないよ。不安だけど。」
「だよな。俺も綾斗達と離れたくねぇなー。」
パシャ
っ!
今、シャッター音が聞こえた気がした。
慌てて窓を開け、外を確認する。
確かこっちの方から。
怪しい人影を探すが、誰もいない。
「どした?」
「う、ううん!何でもない。」
気のせい?
でも確かに聞こえた。
「ただいまー。」
「お、おかえりー、柊。」
2者面談に行っていた柊が帰ってきた。
早かったな。
やっぱ成績優秀者は言うことないってことか。
「ん?綾斗、どうした?」
「あ・・・えっと・・・」
「そう言えば、急に窓開けて目の色変えて外を見てたぞ?」
「・・・仁、悪い。ちょっと俺ら席外す。」
「おう。行ってら。」
柊に手を引かれ、人気の少ない場所へ移動する。
何があったか分かったんだ。
「綾斗、誰かいたのか?」
「ううん、いなかった。でも、シャッター音が聞こえた気がしたんだ。」
「てことはまだ近くにいるな。次の授業、先生に保健室行ってるって伝えておいてくれないか?」
「え、1人は駄目だよ!僕も行く!」
1人では絶対に行かせない。
危険すぎる。
僕も行こうとすると、柊に肩を掴まれた。
「大丈夫、様子を見てくるだけだから。綾斗は学校にいてくれ。な?」
「・・・すぐ、帰ってきてね。一緒に帰るんでしょ。」
「うん、約束する。じゃ。」
柊は走って下駄箱に向かい、コソッと学校を抜け出した。
どうか、何もありませんように。
僕は祈る事しか出来なかった。