第9章 影
その日から、僕の持ち物が無くなるようになってきた。
初めは学校に持っていったものが無くなっていた。
タオル、筆記用具、イヤホン。
無くしただけかもしれない。
そう思っていた。
けど、それも少しずつ変わってきて、今では家に置いている物まで無くなるようになってきた。
服も、歯ブラシも・・・下着も・・・
ここまで来ると流石に僕が無くした感じがしない。
歯ブラシなんかわざわざコンビニまで買いに行った。
正直気持ちが悪い。
「はぁ・・・」
「また無くなってたのか?」
「うん・・・やっぱ、変だ。」
柊と帰る準備をしながら話す。
これまで無くなったものも柊には話した。
「今日なんか教科書だよ。おかげで先生に怒られたし。」
「・・・警察に相談でもしてみるか?」
「いいよ、証拠もないんだから。」
「俺、綾斗が心配だ。だって・・・下着まで・・・無くなるって・・・それ家に入られてるって事だろ。」
「だと思う。でも母さんもいるし、心配は無いと思う。無くなってるだけだからマシだよ。さ、帰ろ。」
コートを羽織り、防寒対策をして鞄を持つ。
マフラーをしようと鞄を漁る。
あれ・・・ない・・・
嘘・・・柊が買ってくれたやつなのに。
「どうした?」
「ない・・・マフラー。」
「え、それって俺が・・・」
「うん・・・ご、ごめん。折角くれたのに。」
最悪だ。
マフラーだけは無くしたくなかったのに。
お気に入りだったのに。
落ち込んでいると柊が自分のマフラーを外し、僕にかけてくれた。
「また買ってやるよ。それに、だいぶ暖かくなってきたし。次は違うのにしよう?」
「うん・・・」
3月と言ってもまだ風は冷たい。
柊は寒くないのだろうか。
「今日さ、泊まっていい?」
「え、えっと・・・母さんに聞かないと・・・////」
「そうだよな。ごめん、少し心配でさ。」
「・・・僕も今日は一緒にいたいかも・・・////」
「よかった。」
柊がいてくれるのは正直安心だ。
それに、学校が終わってもまだ一緒に居られる。
幸せすぎる。