第8章 嫉妬と愛情
「わざわざ家までありがとう。」
「俺こそ遅くまでごめんな。その・・・腰・・・大丈夫か?」
「うん。今は平気。」
初めは立てない程腰が痛かった。
柊は心配してくれて、自転車の後ろに僕を乗せて送ってくれた。
明日はお腹が痛くならないか心配だ。
「じゃあ、明日な。」
「うん、明日。気をつけてね。」
家に入ろうと玄関の前に立つと背後から視線を感じた。
誰かに見られている。
柊はもう帰っちゃったし。
誰・・・
僕は怖くて動けなくなっていた。
固唾を飲んで勢いよく家に入ろうと玄関を開け、鍵を閉めた。
「ふぅ・・・」
「あら、綾ちゃん?遅かったわね。おかえりなさい。」
「た、だいま・・・」
母さんの顔を見ると安心した。
「どうしたの?早くお風呂入りなさい。」
「うん。」
真冬だと言うのに汗が垂れてきた。
母さんが不思議そうな顔をしてリビングに戻っていくのを確認すると、再び溜息を付いた。
全身の力が抜け、腰が抜ける。
地面がひんやりと冷たい。
「なんだったんだろ・・・」
カタッ
背後の扉から物音がした。
ポストの投入口が開く音だ。
僕は横目に何が入ってきたか確認した。
白い封筒?
分厚い。
『矢野綾斗様』
僕にだ。
封筒を手に取り中を開ける。
写真だ。
よく見えなくて封筒を斜めにして取り出す。
勢いよく滑り落ちてきて、そのまま床に散らばってしまった。
数十枚の写真が表を向いている。
「ひっ・・・なに・・・これ・・・」
そこに写っていたのは全部僕だ。
普通の写真だけじゃない。
柊といる写真もある。
それに・・・
いつ撮ったのか分からない・・・ホテルでの写真。
兄さんの知り合い達に犯されている写真。
どこからこんな写真・・・
「綾ちゃん?何してるの?」
「あっ!ううん!何も!すぐ行く!」
僕は母さんが来る前に写真を掻き集め部屋に駆け込んだ。