第2章 廃れた島
するとフードを被った者は、ぐっと踏み込んでローとの間合いをすぐに取った。
彼の能力に驚いたようだったが、すぐに切り替え距離を保つ。
ローは相手の手元を見た。...短剣が一つ。それ以外の武器はないように見える。ローの鬼哭は長刀で、相手からすれば明らかに不利である。
この時点でローは相手が自分の来訪を予想していなかったこと、また殺意がないことを読み取った。
だがどこの馬の骨ともわからない者をそのままに、先を進むのは危険だ。ひとまず身柄を押さえて何者かを問おう、と刀の刃ではなく柄のほうを向けた。
相手は一定の距離を保ったままこちらの様子をうかがっている。
___と思った瞬間、一瞬のスキを付いて相手が動いた。
「チッ...、油断した!」
姿を見失ったローは辺りの岩の間を探す。隠れるには最適な地形は、相手の姿を上手く隠す。見聞色の覇気とも思ったが、意識を集中できる程の暇はない。
「"ROOM"」
まずはサークルを張り、どこから相手がかかってきても対処できるような体勢を取る。このままここらの岩ごと、サークル内で真っ二つにしてもいいが、それだと相手も切ってしまうかもしれない。ローは医者だ。無駄な殺生は好まない。
敵であれば切ることは厭わないが、何者かわからない者を切るのは自分の意に反する。
「お前は誰だ!」
ローは声を張り上げた。
まだ気配が近くからするため、相手は逃げたわけではないのだ。
「お前が"仙人"なのか!?」
発した声は岩に反響し、そのまま辺りへ響く。だが返事はない。
...向こうがだんまりならこっちが動く、とローはしまっていた鬼哭の刃を抜いた。脅し程度に岩を切ろうとしたその時__
「っ!?」
自分の真上から相手が切りかかってきた。
僅差で気配に気づき鬼哭で受けたが、後少し気づくのが遅かったら肩を切られていた。
「この野郎...いるなら返事しやがれ!」
相手の短刀の何倍もある鬼哭で、振り返った勢いに任せ思い切り払う。するとローの刀をまともに受けた相手は、力に押されて後ろへ飛ばされ岩に当たった。
「シャンブルズ」
すぐさまローは能力で、相手の目の前へ瞬間移動し、鬼哭を相手の顔のすぐ横の岩に突き刺した。ガキンッと鈍い音が鳴る。
飛ばされた相手はぐったりとして動く気配はない。
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